会社設立・法人化

法人化の目安はいくらから?個人事業主が会社にする前に見る3つの数字

公開 2026-09-23更新 2026-09-24執筆 フリーランスナビ編集部(合同会社Xsite)読者 個人事業主

法人化の目安は1つの金額では決まらない。見るのは所得(利益)・売上1,000万円のライン・社会保険料の3つ。所得税は5%から45%の累進。法人税は資本金1億円以下の会社なら年800万円以下15%・超は23.2%。法人は1人でも社会保険に入り、東京23区なら赤字でも均等割が年7万円かかる。

この記事の流れ
  1. 法人化の目安は「1つの金額」ではなく3つの数字で見る
  2. 3つの数字で、法人にすると何が変わるか
  3. 具体例:一次ソースの数字で見る税率と固定費
  4. 法人化を考え始めてから届出までの手順と期日
  5. 用語をひらく
はじめてさん

フリーランス3年目です。周りから「そろそろ法人にしたら」と言われます。でも、いくらから法人にすべきか分かりません。

ナビさん

「いくらから」を1つの金額で決めるのは難しいです。見る数字は3つあります。去年の所得、売上、そして社会保険料です。この3つを書き出すと、法人にした時に何が変わるかが見えてきます。

法人化の目安は「1つの金額」ではなく3つの数字で見る

法人化とは、株式会社や合同会社を作り、個人の事業を会社に移すことです。

「所得が何百万円を超えたら法人が得」という言い方をよく見かけます。ただし、その金額は人によって変わります。法人にすると税率が変わるだけでなく、固定費も増えるからです。

だから、このサイトでは1つの金額を示しません。代わりに、次の3つの数字を自分で書き出すことをすすめます。

見る数字何が変わるか確認する場所
所得(利益)所得税の累進税率と法人税率のどちらで課税されるか去年の確定申告書の「所得金額」
売上消費税の課税事業者になる1,000万円のライン去年の確定申告書の「売上金額」
社会保険料法人は社長1人でも健康保険と厚生年金の対象になる協会けんぽの保険料額表

3つの数字で、法人にすると何が変わるか

所得(利益)のポイント

所得とは、売上から経費を引いた残りのことです。個人事業主の所得税は累進税率です。累進税率とは、所得が増えるほど高い税率がかかる仕組みのことです。税率は5%から45%まで7段階あります。

法人の利益には法人税がかかります。資本金1億円以下の法人なら、年800万円以下の部分は15%です。超える部分は23.2%です。所得が大きい区分では、所得税の税率が法人税率より高くなります。役員報酬とは、会社が社長や役員に毎月払う給料のことです。法人にすると、役員報酬にも所得税がかかります。税率表だけで損得は決まりません。

売上のポイント(消費税の1,000万円ライン)

課税売上高とは、消費税がかかる売上の合計のことです。課税売上高が1,000万円を超えると、消費税の課税事業者になります。課税事業者とは、消費税を申告して納める義務のある事業者のことです。判定に使うのは「基準期間」の売上です。基準期間とは、個人なら前々年、法人なら前々事業年度のことです。

新しい法人には基準期間がありません。資本金1,000万円未満なら、原則として設立1期目と2期目は免税です。ただし、1期目の最初の6か月に例外があります。売上と給与がどちらも1,000万円を超えると、2期目から課税事業者です。また、インボイス(適格請求書)の発行事業者に登録すると、免税になりません。

社会保険料のポイント

強制適用とは、条件に当てはまると必ず加入する決まりのことです。従業員が5人未満の個人事業所は、厚生年金と健康保険の強制適用ではありません。個人事業主本人は、健康保険と厚生年金に入れません。そのため、国民年金と国民健康保険に入ります。法人は違います。社長1人だけでも、健康保険と厚生年金に入る義務のある事業所になります。役員報酬を受け取る社長は、原則として加入します。

保険料は会社と本人で半分ずつ払います。このほかに、会社だけが払う子ども・子育て拠出金があります。ひとり社長は、どちらも自分の会社のお金です。保険料は役員報酬の額で決まります。先に数字にしておくと、判断しやすくなります。

具体例:一次ソースの数字で見る税率と固定費

所得税の税率表

課税される所得金額税率控除額
1,000円〜1,949,000円5%0円
1,950,000円〜3,299,000円10%97,500円
3,300,000円〜6,949,000円20%427,500円
6,950,000円〜8,999,000円23%636,000円
9,000,000円〜17,999,000円33%1,536,000円
18,000,000円〜39,999,000円40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円

課税される所得金額とは、所得から各種控除を引いた後の金額のことです。この表の所得税とは別に、住民税などもかかります。

法人税の税率(資本金1億円以下の普通法人)

所得の区分税率
年800万円以下の部分15%
年800万円超の部分23.2%

法人住民税とは、会社が都道府県や市区町村に払う税金のことです。法人事業税とは、事業を行う会社に都道府県が課す税金のことです。法人にも、法人税のほかにこの2つがかかります。

法人で毎年かかるお金(東京23区・ひとり社長の例)

固定費金額備考
法人住民税の均等割年70,000円資本金1,000万円以下・従業者50人以下。赤字でもかかる
社会保険料(役員報酬 月30万円)月86,220円本人42,570円+会社43,650円。令和8年度・40歳未満(介護保険料なし)・子ども・子育て支援金を含む。会社負担は子ども・子育て拠出金0.36%(1,080円)を含む
税理士費用事務所により異なる決算や申告を依頼する場合の費用。公式の定額はない

均等割とは、利益に関係なく法人が毎年払う住民税のことです。国民年金と国民健康保険は、法人の社会保険に切り替わると払わなくなります。増える額はその差額です。社会保険料は都道府県と役員報酬で変わります。自分の条件では、このサイトの社会保険料の計算機で出せます。

はじめてさん

均等割と社会保険料を合わせると、年100万円を超えますね…。所得がいくらなら、これを払っても法人が得ですか?

ナビさん

その計算は、役員報酬の額や経費の中身で答えが変わります。個別の税額の計算は税理士の仕事なので、このサイトでは断定しません。代わりに、固定費を先に数字にして、税理士に相談する時の材料にしてください。

法人化を考え始めてから届出までの手順と期日

決める前にやること

  1. 去年の確定申告書から、所得金額と売上金額を書き出します。
  2. 社会保険料の計算機で、役員報酬の候補額ごとの年額を出します。均等割は東京23区なら年7万円です。
  3. 役員報酬の候補額を1つ決めます。社会保険料はこの額で決まります。

決めた後の届出

定款とは、会社の名前や目的などの基本ルールを書いた書類のことです。登記とは、会社の情報を法務局の帳簿に載せて公に示す手続のことです。

  1. 会社を設立します(定款を作り、法務局で登記する)。
  2. 設立の日以後2か月以内に、税務署へ法人設立届出書を出します。
  3. 適用の事実発生から5日以内に、年金事務所へ新規適用届を出します。
  4. 個人事業の廃業届は、廃業した年分の確定申告期限までに税務署へ出します。

5日以内という期限は短いので、設立の登記が終わったらすぐに動きます。

用語をひらく

役員報酬
会社が社長や役員に毎月払う給料。社会保険料はこの額で決まる。
課税売上高
消費税がかかる売上の合計。基準期間の額が1,000万円を超えると課税事業者になる。
基準期間
消費税の課税事業者かどうかを判定する期間。個人は前々年、法人は前々事業年度。
均等割
法人住民税のうち、利益に関係なく毎年かかる部分。東京23区の小さな会社は年7万円。
新規適用届
会社が健康保険と厚生年金に入る時に年金事務所へ出す届。事実発生から5日以内。

はじめてさんの追加質問

「所得が何百万円を超えたら法人にすべき」とよく聞きます。本当ですか?
税率表だけ見ると、所得が大きい区分では所得税率が法人税率より高くなります。ただし法人には均等割・社会保険料・税理士費用などの固定費が加わります。役員報酬にも所得税がかかります。損得は所得の額だけでなく、役員報酬の額や経費の中身で変わります。そのため、この記事では一律の金額を示していません。個別の試算は税理士に相談してください。
売上が1,000万円を超えたら、すぐに消費税を払うのですか?
すぐではありません。判定に使うのは基準期間の課税売上高です。基準期間は、個人なら前々年、法人なら前々事業年度です。そのため、原則として超えた年の2年後から課税事業者になります。ただし例外があります。特定期間の課税売上高が1,000万円を超えると、翌年から課税事業者です。特定期間は、個人なら前年の1月1日から6月30日までです。この判定は給与等支払額で行うこともできます。
社長1人の会社でも社会保険に入らないといけませんか?
法人は社長1人だけでも、健康保険・厚生年金の適用事業所になります。役員報酬を受け取る社長は、原則として加入します。適用の事実発生から5日以内に、年金事務所へ新規適用届を出します。保険料は会社と本人で半分ずつ負担します。ひとり社長は、どちらも自分の会社から出るお金になります。

出典(一次ソース・取得日)

  1. 国税庁 タックスアンサー No.2260「所得税の税率」(速算表・5%〜45%の7段階) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm(取得日 2026-09-23)
  2. 国税庁 タックスアンサー No.5759「法人税の税率」(資本金1億円以下の普通法人・年800万円以下15%・超23.2%) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm(取得日 2026-09-23)
  3. 国税庁 タックスアンサー No.6501「納税義務の免除」(基準期間の課税売上高1,000万円・特定期間) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6501.htm(取得日 2026-09-23)
  4. 国税庁 タックスアンサー No.6531「新設法人の納税義務の免除の特例」(資本金1,000万円未満の新設法人) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6531.htm(取得日 2026-09-23)
  5. 東京都主税局「均等割額の計算に関する明細書(第6号様式別表4の3)記載の手引」(PDF 1ページ目「都民税均等割の税率表」Ⅰ表・特別区内のみに事務所等を有する法人・資本金等の額1千万円以下かつ従業者50人以下は年70,000円) https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/tax/11_4_3b(取得日 2026-09-23)
  6. 総務省「地方税制度 法人住民税」(都道府県と市町村に事務所などがある法人が納める・均等割と法人税割) https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_08.html(取得日 2026-09-24)
  7. 東京都主税局「法人事業税・法人都民税」(都内に事務所又は事業所を設けて事業を行っている法人に課税・事業年度終了の日から2か月以内に申告) https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/work/houjinji(取得日 2026-09-24)
  8. 全国健康保険協会「令和8年度 東京都の保険料額表」(健康保険料率9.85%・厚生年金保険料率18.3%・子ども・子育て支援金率0.23%・事業主だけが負担する子ども・子育て拠出金率0.36%) https://www.kyoukaikenpo.or.jp/assets/R8_13tokyo.pdf(取得日 2026-09-23)
  9. 日本年金機構「事業所が健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき」(法人事業所は事業主のみでも強制適用) https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20130502.html(取得日 2026-09-23)
  10. 日本年金機構「健康保険・厚生年金保険 新規適用届 詳細説明(ケース1-1)」(事実発生から5日以内) https://www.nenkin.go.jp/shinsei/kounen/tekiyo/jigyosho/20141205.files/0000028540hKTNNDvS46.pdf(取得日 2026-09-23)
  11. 国税庁「内国普通法人等の設立の届出」(法人設立届出書・設立の日以後2月以内) https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/1554_2.htm(取得日 2026-09-23)
  12. 国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」(提出時期・事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで) https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm(取得日 2026-09-23)
  13. 法務局「商業・法人登記の申請書様式」(株式会社・合同会社の設立登記申請書) https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html(取得日 2026-09-23)
この記事を書いた人 フリーランスナビ編集部(合同会社Xsite)

一人法人を自分で回している運営者と編集部が、制度の一次情報(官公庁・公式サイト)を確認して書く。個別の税務・社会保険労務の相談には答えない。編集方針と運営者情報

本記事は一般的な情報提供を目的とし、掲載時点の制度に基づく。個別の税務・社会保険労務・法務の判断は、税理士・社会保険労務士・弁護士等の専門家へ。

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