はじめてさんフリーランス3年目です。周りから「そろそろ法人にしたら」と言われます。でも、いくらから法人にすべきか分かりません。
ナビさん「いくらから」を1つの金額で決めるのは難しいです。見る数字は3つあります。去年の所得、売上、そして社会保険料です。この3つを書き出すと、法人にした時に何が変わるかが見えてきます。
法人化の目安は「1つの金額」ではなく3つの数字で見る
法人化とは、株式会社や合同会社を作り、個人の事業を会社に移すことです。
「所得が何百万円を超えたら法人が得」という言い方をよく見かけます。ただし、その金額は人によって変わります。法人にすると税率が変わるだけでなく、固定費も増えるからです。
だから、このサイトでは1つの金額を示しません。代わりに、次の3つの数字を自分で書き出すことをすすめます。
| 見る数字 | 何が変わるか | 確認する場所 |
|---|---|---|
| 所得(利益) | 所得税の累進税率と法人税率のどちらで課税されるか | 去年の確定申告書の「所得金額」 |
| 売上 | 消費税の課税事業者になる1,000万円のライン | 去年の確定申告書の「売上金額」 |
| 社会保険料 | 法人は社長1人でも健康保険と厚生年金の対象になる | 協会けんぽの保険料額表 |
3つの数字で、法人にすると何が変わるか
所得(利益)のポイント
所得とは、売上から経費を引いた残りのことです。個人事業主の所得税は累進税率です。累進税率とは、所得が増えるほど高い税率がかかる仕組みのことです。税率は5%から45%まで7段階あります。
法人の利益には法人税がかかります。資本金1億円以下の法人なら、年800万円以下の部分は15%です。超える部分は23.2%です。所得が大きい区分では、所得税の税率が法人税率より高くなります。役員報酬とは、会社が社長や役員に毎月払う給料のことです。法人にすると、役員報酬にも所得税がかかります。税率表だけで損得は決まりません。
売上のポイント(消費税の1,000万円ライン)
課税売上高とは、消費税がかかる売上の合計のことです。課税売上高が1,000万円を超えると、消費税の課税事業者になります。課税事業者とは、消費税を申告して納める義務のある事業者のことです。判定に使うのは「基準期間」の売上です。基準期間とは、個人なら前々年、法人なら前々事業年度のことです。
新しい法人には基準期間がありません。資本金1,000万円未満なら、原則として設立1期目と2期目は免税です。ただし、1期目の最初の6か月に例外があります。売上と給与がどちらも1,000万円を超えると、2期目から課税事業者です。また、インボイス(適格請求書)の発行事業者に登録すると、免税になりません。
社会保険料のポイント
強制適用とは、条件に当てはまると必ず加入する決まりのことです。従業員が5人未満の個人事業所は、厚生年金と健康保険の強制適用ではありません。個人事業主本人は、健康保険と厚生年金に入れません。そのため、国民年金と国民健康保険に入ります。法人は違います。社長1人だけでも、健康保険と厚生年金に入る義務のある事業所になります。役員報酬を受け取る社長は、原則として加入します。
保険料は会社と本人で半分ずつ払います。このほかに、会社だけが払う子ども・子育て拠出金があります。ひとり社長は、どちらも自分の会社のお金です。保険料は役員報酬の額で決まります。先に数字にしておくと、判断しやすくなります。
具体例:一次ソースの数字で見る税率と固定費
所得税の税率表
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円〜1,949,000円 | 5% | 0円 |
| 1,950,000円〜3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
| 3,300,000円〜6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円〜8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円〜17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
| 18,000,000円〜39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
| 40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
課税される所得金額とは、所得から各種控除を引いた後の金額のことです。この表の所得税とは別に、住民税などもかかります。
法人税の税率(資本金1億円以下の普通法人)
| 所得の区分 | 税率 |
|---|---|
| 年800万円以下の部分 | 15% |
| 年800万円超の部分 | 23.2% |
法人住民税とは、会社が都道府県や市区町村に払う税金のことです。法人事業税とは、事業を行う会社に都道府県が課す税金のことです。法人にも、法人税のほかにこの2つがかかります。
法人で毎年かかるお金(東京23区・ひとり社長の例)
| 固定費 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 法人住民税の均等割 | 年70,000円 | 資本金1,000万円以下・従業者50人以下。赤字でもかかる |
| 社会保険料(役員報酬 月30万円) | 月86,220円 | 本人42,570円+会社43,650円。令和8年度・40歳未満(介護保険料なし)・子ども・子育て支援金を含む。会社負担は子ども・子育て拠出金0.36%(1,080円)を含む |
| 税理士費用 | 事務所により異なる | 決算や申告を依頼する場合の費用。公式の定額はない |
均等割とは、利益に関係なく法人が毎年払う住民税のことです。国民年金と国民健康保険は、法人の社会保険に切り替わると払わなくなります。増える額はその差額です。社会保険料は都道府県と役員報酬で変わります。自分の条件では、このサイトの社会保険料の計算機で出せます。
はじめてさん均等割と社会保険料を合わせると、年100万円を超えますね…。所得がいくらなら、これを払っても法人が得ですか?
ナビさんその計算は、役員報酬の額や経費の中身で答えが変わります。個別の税額の計算は税理士の仕事なので、このサイトでは断定しません。代わりに、固定費を先に数字にして、税理士に相談する時の材料にしてください。
法人化を考え始めてから届出までの手順と期日
決める前にやること
- 去年の確定申告書から、所得金額と売上金額を書き出します。
- 社会保険料の計算機で、役員報酬の候補額ごとの年額を出します。均等割は東京23区なら年7万円です。
- 役員報酬の候補額を1つ決めます。社会保険料はこの額で決まります。
決めた後の届出
定款とは、会社の名前や目的などの基本ルールを書いた書類のことです。登記とは、会社の情報を法務局の帳簿に載せて公に示す手続のことです。
- 会社を設立します(定款を作り、法務局で登記する)。
- 設立の日以後2か月以内に、税務署へ法人設立届出書を出します。
- 適用の事実発生から5日以内に、年金事務所へ新規適用届を出します。
- 個人事業の廃業届は、廃業した年分の確定申告期限までに税務署へ出します。
5日以内という期限は短いので、設立の登記が終わったらすぐに動きます。
用語をひらく
- 役員報酬
- 会社が社長や役員に毎月払う給料。社会保険料はこの額で決まる。
- 課税売上高
- 消費税がかかる売上の合計。基準期間の額が1,000万円を超えると課税事業者になる。
- 基準期間
- 消費税の課税事業者かどうかを判定する期間。個人は前々年、法人は前々事業年度。
- 均等割
- 法人住民税のうち、利益に関係なく毎年かかる部分。東京23区の小さな会社は年7万円。
- 新規適用届
- 会社が健康保険と厚生年金に入る時に年金事務所へ出す届。事実発生から5日以内。