はじめてさん取引先から「インボイスの登録はしていますか」と聞かれました。私は免税事業者です。登録しないとまずいのでしょうか。
ナビさん登録するかどうかは事業者が選べます。判断の出発点は「取引先がインボイスを必要とするか」です。まず、主な取引先が誰かを整理しましょう。
判断の出発点は「取引先がインボイスを必要とするか」
インボイスとは、消費税の額と登録番号を書いた請求書のことです。買手が仕入税額控除を受けるには、原則としてインボイスの保存が必要です。仕入税額控除とは、売上の消費税から仕入れの消費税を引く計算のことです。
つまり、インボイスを必要とするのは、一般課税で消費税を申告する取引先だけです。一般課税とは、仕入れの消費税を実額で引く、いちばん基本の計算方式のことです。一般の消費者や、インボイスが要らない方式で申告する取引先には影響しません。一方、一般課税の取引先は、インボイスがないと控除できる額が減っていきます。
取引先を4つのタイプに分ける
主な取引先を書き出し、次の表に当てはめます。相手が複数いる場合は、取引先ごとに見ます。表の基準期間とは、個人事業者なら前々年のことです。課税売上高とは、消費税の対象になる売上のことです。
| 主な取引先 | 相手にインボイスが必要か | 登録しない場合に起きること |
|---|---|---|
| 一般の消費者 | 不要 | 相手の税額は変わらない |
| 免税事業者(原則、基準期間の課税売上高1,000万円以下) | 不要 | 相手の税額は変わらない |
| 簡易課税・2割特例・3割特例で申告する事業者 | 不要 | 相手の税額は変わらない |
| 一般課税で申告する課税事業者 | 必要 | 相手が控除できる額が減る |
インボイスが要るのは一般課税の課税事業者だけ
課税事業者とは、消費税を申告して納める事業者のことです。一般の消費者は消費税を申告しないので、インボイスを使う場面がありません。簡易課税とは、売上の消費税に業種ごとの割合を掛けて税額を出す方式のことです。2割特例・3割特例とは、納付税額を売上の消費税の2割か3割にする特例のことです。どちらも納付税額の計算にインボイスを使いません。
相手が課税事業者かどうか、簡易課税かどうかは、外からは分かりません。取引先に直接確かめるのが確実です。
登録しない場合に取引先が受ける影響を数字で見る
免税事業者からの仕入れには経過措置があります。経過措置とは、制度を段階的に切り替えるための一時的なルールのことです。取引先はインボイスがなくても、仕入れの消費税の一定割合を控除できます。割合は段階的に下がり、令和13年10月以降はゼロになります。税抜10万円の仕事(消費税1万円)で見ると次のとおりです。
| 期間 | 控除できる割合 | 消費税1万円のうち控除できる額 |
|---|---|---|
| 令和5年10月1日〜令和8年9月30日 | 80% | 8,000円 |
| 令和8年10月1日〜令和10年9月30日 | 70% | 7,000円 |
| 令和10年10月1日〜令和12年9月30日 | 50% | 5,000円 |
| 令和12年10月1日〜令和13年9月30日 | 30% | 3,000円 |
| 令和13年10月1日以降 | 0% | 0円 |
令和8年度の税制改正で、期限が2年延び、割合も見直されました。
はじめてさん私の取引先はほとんど法人です。登録すると、何が変わりますか。
ナビさん登録した日から、消費税の申告と納付が必要になります。ただし小規模な事業者向けの特例があります。令和8年分までは2割特例、令和9年分と10年分は3割特例です。
登録すると消費税の申告が必要になる
登録する場合としない場合の違いは、次の4点です。
| 項目 | 登録しない | 登録する |
|---|---|---|
| 取引先の控除 | 一般課税の取引先は経過措置の割合に減る | 全額控除できる |
| 自分の申告・納付 | なし | あり(2割特例・3割特例あり) |
| インボイスの交付と写しの保存 | なし | 求められたら交付し、写しを保存する |
| やめるとき | 該当なし | 登録日から原則2年間は申告が続く |
登録を受けると、課税事業者として消費税の申告が必要です。基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも免除されません。免税事業者が登録した場合、原則として登録日から2年間は申告が続きます。
売手として、取引先に求められたときはインボイスを交付します。交付したインボイスの写しは保存が必要です。
登録するかどうかは、自分の売上や取引条件でも変わります。個別の判断は税務署か税理士に確認してください。この記事は制度の仕組みと判断の材料までを説明しています。
2割特例と3割特例の期間と条件
2割特例とは、納付税額を売上の消費税額の2割にできる制度のことです。令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間で使えます。課税期間とは、個人事業者では1月1日〜12月31日の1年のことです。個人事業者なら令和8年分の申告までです。
3割特例とは、納付税額を売上の消費税額の3割にできる制度のことです。対象は令和9年分と令和10年分の申告で、個人事業者だけが使えます。法人は使えません。
| 申告する年分(個人事業者) | 使える特例 | 納付税額 |
|---|---|---|
| 令和5年分(10〜12月)〜令和8年分 | 2割特例 | 売上の消費税額の2割 |
| 令和9年分・令和10年分 | 3割特例 | 売上の消費税額の3割 |
| 令和11年分以降 | 簡易課税か一般課税 | 事業区分などで変わる |
特例の翌年分から簡易課税に移る場合、届出書はその年分の申告期限までに出せます。
特例を使える条件
どちらの特例も、主な条件は2つです。1つは、インボイス登録を機に免税事業者から課税事業者になったことです。もう1つは、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であることです。課税期間を短くしている人などは使えません。
登録する場合の手順と期日
- 登録申請書を出す。e-Taxソフト(WEB版)なら、スマホやパソコンから申請できます。
- 登録希望日を書く。免税事業者は登録希望日を書けます。登録希望日は、申請書の提出日から15日以降の日です。
- 登録日からインボイスを交付する。登録通知が届くまでは一定の期間がかかります。
- 消費税の確定申告をする。2割特例で申告する時は付表6(2割特例用の計算表)を使います。納付は振替納税やダイレクト納付など、窓口に行かない方法が使えます。振替納税とは、口座から自動で引き落とす方法のことです。ダイレクト納付も口座引き落としによるキャッシュレス納付です。
用語をひらく
- 仕入税額控除
- 売上の消費税から、仕入れや経費で払った消費税を引く計算。原則としてインボイスの保存が必要。
- 免税事業者
- 基準期間の課税売上高が1,000万円以下などの条件を満たし、消費税の納税義務がない事業者。前年1〜6月の売上や給与が1,000万円を超えると免除されない。登録を受けた場合も同じ。
- 基準期間
- 納税義務を判定する期間。個人事業者はその年の前々年、法人は前々事業年度。
- 簡易課税
- 基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が使える計算方式。売上の消費税にみなし仕入率(業種ごとに決まった、仕入れとみなす割合)を掛けて納付税額を出す。届出が必要で、原則2年間続ける。
- 課税期間
- 消費税を計算して申告する期間。個人事業者は1月1日〜12月31日の1年。