はじめてさん役員報酬を決めたら「標準報酬月額」で保険料が決まる、と言われました。これって手取りのことですか? それとも総支給のことですか?
ナビさんどちらでもありません。「月給をキリのいい幅で区切って、保険料を計算するために決めた額」です。手取りは税金や保険料を引いた後の額なので、保険料の計算には使いません。
標準報酬月額は「保険料を計算するための、区切りのいい月額」
標準報酬月額とは、社会保険(健康保険と厚生年金)の保険料を計算するために、月々の報酬をあらかじめ決められた幅に当てはめた額のことです。
たとえば東京で役員報酬が月30万円なら、標準報酬月額は30万円の段(等級)に入ります。報酬が月29万5千円でも30万4千円でも、同じ30万円の段に入るので、保険料も同じになります。
この「段」のことを等級と呼びます。健康保険は1等級(5万8千円)から50等級(139万円)まで、厚生年金は1等級(8万8千円)から32等級(65万円)までです。厚生年金のほうが段の数が少ないので、報酬が高い人は厚生年金の保険料に上限があります。
等級表の見方(東京・令和8年度の例)
等級表には「報酬月額の範囲」と「標準報酬月額」と「保険料」が横に並んでいます。自分の報酬月額がどの範囲に入るかを探して、その行の保険料を読むだけです。
東京都の令和8年度の料率は、健康保険が9.85%、厚生年金が18.3%、子ども・子育て支援金が0.23%です。ここまでは会社と本人で半分ずつ払います。このほかに、会社だけが全額を払う「子ども・子育て拠出金」が0.36%あります。
下の例の前提は、令和8年度・協会けんぽ東京支部・40歳未満(介護保険なし)・賞与なしです。
| 役員報酬(月額) | 標準報酬月額 | 本人負担(月・介護なし) | 会社負担(月・拠出金を含む) |
|---|---|---|---|
| 25万円 | 26万円 | 36,894円 | 37,830円 |
| 30万円 | 30万円 | 42,570円 | 43,650円 |
| 40万円 | 41万円 | 58,179円 | 59,655円 |
会社負担もひとり社長なら自分の会社から出るお金です。月30万円の報酬なら、会社全体で毎月86,220円(本人42,570円+会社43,650円)が社会保険料として出ていく計算になります。会社負担のほうが1,080円多いのは、拠出金の分です。
はじめてさん本人負担と会社負担、合わせて8万6千円…。思ったより大きいです。
ナビさんここを先に見ておくと、役員報酬を決めやすくなります。都道府県によって健康保険の料率が違うので、自分の都道府県で計算してください。
いつ決まるか(3つのタイミング)
標準報酬月額は、次の3つのタイミングで決まったり、見直されたりします。
- 資格取得時決定。会社を作って社会保険に入った時に、これから払う予定の報酬額で決めます。ひとり社長は設立時の役員報酬がここに当たります。
- 定時決定。毎年4月・5月・6月の報酬の平均で決め直します。7月10日までに「算定基礎届」を出し、9月分の保険料から新しい額になります。
- 随時改定。固定の報酬(役員報酬の月額など)が変わり、変わった月から3か月の報酬の平均が今の等級と2等級以上ずれ、その3か月とも支払基礎日数が17日以上ある時に、4か月目から見直します。「月額変更届」を出します。3つの条件がそろわないと対象になりません。
役員報酬は、法人税の扱いの都合で年度の途中に変えにくい仕組みになっています。毎月の役員報酬は、同じ額を払い続ける「定期同額給与」であれば会社の経費(損金)にできます。額を変えるのは、原則として事業年度の開始から3か月以内です。そのため、ひとり社長は「設立時に決める」「毎年7月の算定基礎届で確認する」の2つを押さえておけば、ほとんどの場面をカバーできます。
保険料の内訳
保険料の内訳は、次の4つ(40歳以上は5つ)です。このうち1つは会社だけが払います。
- 健康保険料。病院にかかった時の医療費の元になる保険。都道府県ごとに料率が違います
- 厚生年金保険料。将来の年金の元になる保険。全国一律で18.3%(本人はその半分)
- 子ども・子育て支援金。令和8年4月分から健康保険料と一緒に集められている分。料率は0.23%
- 子ども・子育て拠出金。会社だけが全額を払う分で、本人負担はありません。料率は令和8年度も0.36%(令和7年度と同じ)で、厚生年金の標準報酬月額に掛けます
- 介護保険料。40歳から64歳までの人だけ。健康保険料に上乗せされます
これらは会社が本人負担分を報酬から預かり、会社負担分と合わせて翌月末までに納めます(例:4月分は5月末まで)。ひとり社長は「払う側」と「預かる側」の両方を自分でやることになります。
用語をひらく
- 報酬月額
- 等級表に当てはめる前の、実際の月々の報酬。役員報酬なら毎月の支給額。
- 算定基礎届
- 毎年7月10日までに年金事務所へ出す届。4〜6月の報酬を書いて、9月からの標準報酬月額を決めてもらう。
- 月額変更届
- 固定の報酬が変わった時に出す届。3か月の平均で2等級以上ずれ、3か月とも支払基礎日数が17日以上なら対象。
- 折半
- 保険料を会社と本人で半分ずつ負担すること。等級表の「折半額」が本人負担。