はじめてさん初めて原稿料の請求書を出します。「源泉徴収して振り込みます」と言われました。請求書にはどう書けばいいですか? 消費税も載せるのですか?
ナビさん書くのは4行です。税抜の報酬、消費税、源泉徴収税額、振込額を分けて書きます。源泉徴収の行が要るかどうかは、仕事の種類と相手で決まります。
結論:源泉徴収は仕事の種類と相手で決まり、消費税は別の行に書く
源泉徴収とは、報酬を払う側が税金を先に差し引いて国へ納めることです。原稿料やデザイン料、講演料の率は10.21%です(国税庁 No.2795)。令和8年分までの内訳は、所得税10%と復興特別所得税0.21%(所得税の2.1%)です。令和9年分以後も率は10.21%のままで、内訳が変わります。復興特別所得税が所得税の1.1%に下がり、防衛特別所得税(所得税の1%)が加わります(国税庁 No.2260)。100万円を超える部分は20.42%になります。
対象は、法律で決まった種類の仕事だけです。原稿料、デザイン料、講演料が代表です。払う相手が法人か、給与を払う個人の時に限ります。
消費税は、税抜の報酬と別の行に書きます。分けて書けば、相手は税抜の額だけを対象にできます(国税庁 No.2795)。税込でまとめて書くと、消費税を含んだ額が対象です。
自分の請求書に源泉徴収の行が要るか
次の2つの条件を両方満たす時だけ、源泉徴収の行を書きます。どちらか一方でも外れれば、書きません。
条件1:仕事の種類が法律の列挙に入っている
所得税法第204条は、対象になる報酬を一つずつ列挙しています。列挙にない仕事は対象になりません。名目ではなく仕事の実態で判断されます。謝金や取材費という名前でも、実態が原稿料なら対象です。デザインと開発が混ざる仕事は、請求書で項目を分けて書きます。どの部分が対象になるかは実態で決まります。判断は相手の経理か税務署に確かめます。
| 対象になる仕事の例 | 法律の列挙に入っていない仕事の例 |
|---|---|
| 原稿料、さし絵料、作曲料、デザイン料 | プログラミング、システム開発 |
| 講演料、著作権の使用料、放送謝金 | データ入力、事務代行 |
| 翻訳料、通訳料、校正料 | 商品の販売代金 |
| 印刷物に載せる写真の報酬 | |
| 技芸やスポーツ、知識を教える指導料 |
右の列は、法律と施行令の文言からこのサイトが読み取った例です。迷う時は税務署に確かめます。
条件2:相手が法人か、給与を払っている個人
源泉徴収をする義務があるのは、法人と、給与を払っている個人です。給与を誰にも払っていない個人からの支払いには、源泉徴収はありません。給与を払っていても、例外があります。家事使用人とは、家の掃除や炊事を頼む人のことです。常時2人以下の家事使用人だけに給与を払う個人は、義務がありません。根拠は所得税法184条と204条2項です。相手がどちらかは、相手に確認するのが確実です。
| 相手 | 源泉徴収の行 |
|---|---|
| 法人(会社、団体) | 書く |
| 従業員に給与を払っている個人事業主 | 書く |
| 常時2人以下の家事使用人だけに給与を払っている個人 | 書かない |
| 給与を誰にも払っていない個人 | 書かない |
税抜10万円の原稿料で計算する
原稿料の税抜額が10万円、消費税(10%)が1万円の例です。消費税を分けて書くかどうかで、差し引かれる額が変わります。
| 書き方 | 源泉徴収の対象額 | 源泉徴収税額 | 振込額 |
|---|---|---|---|
| 税抜10万円と消費税1万円を分けて書く | 100,000円 | 10,210円 | 99,790円 |
| 税込11万円とまとめて書く | 110,000円 | 11,231円 | 98,769円 |
分けて書くだけで、差し引かれる額が1,021円少なくなることがあります。
100万円を超える時の式
100万円を超える部分だけ、率が20.42%になります。税額に1円未満の端数が出た時は切り捨てます。
| 税抜の報酬 | 計算式 | 源泉徴収税額 |
|---|---|---|
| 100万円以下 | 報酬 × 10.21% | 10万円なら10,210円 |
| 100万円超 | (報酬 − 100万円)× 20.42% + 102,100円 | 150万円なら204,200円 |
はじめてさん源泉徴収の額は、私が計算して書くものなのですか? 相手が計算するものだと思っていました。
ナビさん計算して納めるのは相手の義務です。ただ、請求書に書いておくと、相手の計算と振込額が揃いやすくなります。書くのは義務ではありません。相手の手間を減らす親切です。
請求書に書く順番と、相手の期日
- 相手が法人か、給与を払っている個人かを確認します。
- 仕事の種類が列挙に入っているかを確認します。迷う時は相手に聞きます。
- 税抜の報酬額を書き、次の行に消費税額を書きます。
- 源泉徴収の対象なら、税抜額に10.21%を掛けます。その額を「源泉徴収税額」の行に書きます。
- 最後に「振込額 = 税抜額 + 消費税額 − 源泉徴収税額」を書きます。
期日は相手側にあります。相手は差し引いた税金を、支払った月の翌月10日までに国へ納めます。請求書に源泉徴収税額が書いてあると、相手はその額をそのまま使えます。
インボイスの登録番号を載せる場合
適格請求書とは、消費税額と税率を決まった形で書いた請求書のことです。インボイスとも呼びます。出せるのは、発行事業者として登録した人だけです。登録は税務署に申請して行います。登録すると、税務署から登録番号が通知されます。その番号を、自分の氏名か屋号(お店や仕事の名前)と一緒に書きます。登録していない人は、登録番号を書けません。
| 決まった記載事項 | 原稿料の請求書ではこう書く |
|---|---|
| 売手の氏名又は名称と登録番号 | 自分の氏名か屋号と、通知された登録番号 |
| 交付先の氏名又は名称 | 相手の会社名 |
| 取引年月日 | 取引した日 |
| 取引内容 | 「〇〇原稿の執筆料」など |
| 税率ごとの合計額と適用税率 | 100,000円(10%対象) |
| 税率ごとの消費税額 | 10,000円 |
源泉徴収税額は、この記載事項に入っていません。決まった位置はないので、振込額の直前に書くと分かりやすいです。
登録していない人の請求書
登録していない人の請求書でも、消費税の額を分けて書けば扱いは同じです。相手は税抜の額だけを対象にできます。国税庁が、インボイス制度の開始後も変わらないと示しています。
用語をひらく
- 源泉徴収
- 報酬を払う側が税金を先に差し引き、本人の代わりに国へ納める仕組み。差し引くのは所得税と復興特別所得税(令和9年分以後は防衛特別所得税も)。原稿料などの率は10.21%と20.42%の2段階。
- 源泉徴収義務者
- 源泉徴収をして国に納める義務がある側。法人と、給与を払っている個人が当たる。常時2人以下の家事使用人だけに給与を払う個人は除く。
- 税抜額
- 消費税を含める前の報酬の額。消費税と分けて書けば、相手はこの額だけを源泉徴収の対象にできる。
- 適格請求書(インボイス)
- 登録番号、税率ごとの合計額と消費税額などを決まった形で書いた請求書。登録した人だけが出せる。
- 登録番号
- インボイス発行事業者として登録した時に、税務署から通知される番号。記載事項の一つで、位置の決まりはない。